2023年06月30日

2023年 第25週
(令和5年6月19日~令和5年6月25日)

【今週の注目疾患】
■ヘルパンギーナ
 2023 年第 25 週に県内の小児科定点医療機関から報告されたヘルパンギーナの定点当たり報告数は 7.06(人)〔報告数 904 例〕となり、同疾患の警報レベル開始基準値である定点当たり報告数 6.0 人を上回った。
定点当たり警報(注意報)レベルの基準値はインフルエンザ等の一部の定点把握疾患に対し、国の研究において、これまでの報告数をもとに定められており、大きな流行が発生または継続しつつあると疑われる状態を指すとされている 1)2)。
県において同疾患の定点当たり報告数が警報レベルの開始基準値を上回ったのは 2012 年以来となる。

 報告された 904 例のうち、性別では男性 472 例(52.2%)、女性 432 例(47.8%)で男性がやや多く、年齢区分別では 1 歳が 175 例(19.4%)で最も多く、次いで 2 歳が 168 例(18.6%)、3 歳が 144 例(15.9%)、4 歳が 136 例(15.0%)、5 歳が 113 例(12.5%)と続いた。
2019 年以降の年齢区分別の年次推移では 2023 年は 2019 年~2022 年に比べて 0 歳(~5 か月、~11 か月)、1 歳の割合が低かった一方、3 歳以上の割合が高い傾向が見られた。
 地域別では、県下 16 保健所中 7 保健所管内(野田、松戸、船橋市、習志野、千葉市、印旛、君津)で定点当たり報告数 6.0 人超の患者数が報告され、全県的な流行が見られており、特に報告数が多かった地域は習志野(15.40)、船橋市(12.09)、千葉市(9.22)保健所管内であった。

 ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性ウイルス性咽頭炎である。
①突然の高熱での発症、②口蓋垂付近の水疱疹や潰瘍や発赤の両方の臨床的特徴を有する場合に届出の対象となる 3)。
乳幼児を中心に夏季に流行し、いわゆる夏風邪の代表的疾患の 1 つである。
エンテロウイルス(コクサッキーウイルス A 群 2,3,4,5,6,10、コクサッキーウイルス B 群、エコーウイルスなど)が原因ウイルスとなる。
ヘルパンギーナの臨床症状は、2~4 日の潜伏期を経て、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現し、咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内に直径 1~2mm、場合により大きいものでは5mm ほどの紅暈に囲まれた小水疱が出現する。
やがて小水疱は破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴う。
発熱については 2~4 日間程度で解熱し、それに遅れて粘膜疹も消失する。
基本的に予後は良好であるが、無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあり、発熱以外に頭痛や嘔吐等の症状や、心不全徴候の出現に注意が必要である 4)。
 なお、無菌性髄膜炎については 2023 年では第1~25 週までに県内基幹定点医療機関から計 6 例届出があり、例年と比較して増加兆候は現状では見られていない。

≪引用・参考≫
1)国立感染症研究所:警報・注意報発生システムとは
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2)「マスギャザリング時や新興・再興感染症の発生に備えた感染症サーベイランスの強化とリスクアセスメントに関する研究(厚生労働行政推進調査事業費補助金)」疫学的・統計学的なサーベイランスの評価と改善 研究報告書 令和元年度(2019)
3)厚生労働省:ヘルパンギーナ
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4)国立感染症研究所:ヘルパンギーナとは
>>詳細はこちら

【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
 2023年第25週の県全体の定点当たり報告数は、前週の7.58人*から増加し7.77人であった。
定点観測開始となった2023年第19週以降、県内の定点当たり報告数は増加傾向にある。
県内16保健所中10保健所管内で前週より定点当たり報告数が増加した。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年6月28日更新)