2023年06月02日

2023年 第21週
(令和5年5月22日~令和5年5月28日)

【今週の注目疾患】
■腸管出血性大腸菌感染症
 2023 年第 21 週に県内医療機関から 6 例の腸管出血性大腸菌感染症の届出があり、本年の累計は 28 例となった。
第 21 週時点では、2018 年以降で最も多い累計数となった。
例年、小児から高齢者まで幅広い年齢層の報告がある。
また、第 21 週には、本年 1 例目となる溶血性尿毒症症候群(HUS)が報告された1)。

 腸管出血性大腸菌感染症の原因菌はベロ毒素(VT)を産生する大腸菌である。
腸管出血性大腸菌は家畜等の腸管内に生息しており、感染経路は糞便に汚染された食品や手指などを介した経口感染である。
少ない菌数(50個程度)で感染が成立するため感染が拡大しやすい。
 症状は無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々である。
多くの場合、3~5日間の潜伏期を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様便の後に血便となる。
発熱は軽度で37℃台である。
血便の初期には血液の混入は少量であるが、次第に増加し、典型例では便成分の少ない血液そのものという状態になる。
有症者の6~7%において、下痢などの初発症状発現の数日から2週間以内にHUSまたは脳症などの重篤な合併症が発生する。
HUSを発症した患者の致死率は1~5%とされている2)。
 予防の方法として、食品を介した経口感染(食べ物から人への感染)に対しては、食肉類は中心部までよく加熱する(中心部が75℃1分間以上の加熱)、生肉を触った後の手指、調理器具はよく洗浄して消毒する、まな板等の調理器具は用途別に使い分ける、生肉を取り分ける箸(トング)と焼きあがった肉を取り分けたり食べたりする箸(トング)を使い分ける、加熱せずに食べる野菜や果物は十分に洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌することが重要である3)。
 手指を介した経口感染(人から人への感染)に対しては、手洗いが最も重要である。
排便後や食事前はもちろんのこと、特に下痢をしている乳幼児や高齢者の世話をする際には、使い捨て手袋を用い、作業後には石けんと流水でよく手を洗う。
少量の菌数で感染が成立するので、乳幼児や高齢者が集団生活を行う場合や家庭内などでは二次感染の防止が重要である4)。

■引用・参考
1)千葉県健康福祉部疾病対策課:腸管出血性大腸菌(O157)による溶血性尿毒症症候群(HUS)の発生について(令和5年5月29日)
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2)国立感染症研究所:腸管出血性大腸菌感染症とは
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3)千葉県:腸管出血性大腸菌について
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4)厚生労働省:一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)
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■感染性胃腸炎
 2023 年第 21 週に県内の小児科定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たり報告数は、前週(2023 年第 20 週)の 7.33(人)から増加し、7.88(人)となった。
4 週連続で過去 5 シーズンにおける最も高い定点当たり報告数となった。
 今シーズンは県内でノロウイルスやサポウイルス、アデノウイルスによる集団発生事例が複数確認されている。
乳幼児や高齢者等では、嘔吐、下痢によって脱水症状になることや、体力を消耗することがある。
特に高齢者では嘔吐物による誤嚥性肺炎を起こすこともあり注意を要する。
 現在ノロウイルス・サポウイルス・アデノウイルスによる感染性胃腸炎に使用可能なワクチンはない。
また、消毒用エタノールのみでは十分な効果を期待できないことから、感染を予防するためには、食品類の十分な加熱、石けんと流水による手洗いの励行、嘔吐物・糞便等の迅速かつ適切な処理(使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用する、飛散しないようペーパータオル等で静かにふき取る、市販の凝固剤等を使用する等)及び次亜塩素酸ナトリウム等による汚染区域の消毒が重要となる。
手指に付着しているウイルスを減らす最も有効な方法は石けんと流水による手洗いである。
調理や食事の提供を行う前、食事の前、トイレの後は必ず手洗いを行う。
また、手袋をしている場合であっても、嘔吐物・糞便等の処理やオムツ交換を行った後は必ず手洗いを行うことが重要である1)。

■引用・参考
1)厚生労働省:ノロウイルスに関する Q&A
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【新型コロナウイルス感染症の発生状況】
2023年21週の県全体の定点当たり報告数は、前週の3.97人から増加し5.21人であった。
県内16保健所全ての管内から報告があった。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年5月31日更新)