2023年05月12日
2023年 第18週
(令和5年5月1日~令和5年5月7日)
【今週の注目疾患】
■百日咳
2023 年第 18 週に県内医療機関から百日咳の届出が 2 例あり、2023 年の累計報告数は 4 例となった。
4 例のうち、1 歳以上 5 歳未満が 2 例(予防接種歴:3 回)、20 代1 例(予防接種歴:不明)、30 代 1 例(予防接種歴:不明)であった。
百日咳は、2018年1月1日から、それまでの小児科定点把握疾患から成人を含む原則検査診断による5類全数把握疾患となった(ただし、検査確定例と接触歴のある、百日咳の臨床的特徴を有する症例は必ずしも検査所見を必要としない)1)2)。
全数把握疾患となった2018年以降、県内での百日咳の報告数は、2018年に569例、2019年に819例報告されたが、2020年以降著しく減少している(2020年:78例、2021年:17例、2022年:8例)。
百日咳はグラム陰性桿菌である百日咳菌の感染によるが、一部はパラ百日咳菌も原因となる。
感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染及び接触感染である 1)。
国立感染症研究所の報告では、全国でも、千葉県と同様に 2020 年から患者報告数が減少しており 3)4)、この要因について、新型コロナウイルス感染症対策として「人と人の距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」などの感染対策の実施を推進したことによる影響が考えられる、としている 3)。
なお、同報告では、重症化リスクが高い 6 か月未満の患者について、その感染源の多くが兄妹や両親であったとされている 3)4)。
百日咳は世界的に見られる特有のけいれん性の咳発作を特徴とする疾患で、小児が中心となるが、いずれの年齢でもかかる可能性がある。
乳児期早期から罹患する可能性があり、1 歳未満の乳児、特に生後 6 か月以下では死に至る危険性も高い 1)。
そのため、百日咳による乳児の重症化予防の観点から、2023 年度からは定期予防接種の接種可能な最低年齢が生後 3 か月から生後 2 か月に前倒しされることとなった 5)。
定期予防接種の接種可能な最低年齢が生後 3 か月から生後 2 か月に前倒しされたこと、また、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが 5 類感染症に変更され、基本的な感染対策の実施は個人・事業者の判断によることが基本とされたことから 6)、百日咳の発生動向が変化する可能性があり、今後の発生動向に注意が必要である。
■参考
1)国立感染症研究所:百日咳とは
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2)国立感染症研究所:百日咳 感染症法に基づく医師届出ガイドライン(第二版)
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3)国立感染症研究所:全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学(更新情報)2021 年疫学週第 1 週~第 52 週
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4)国立感染症研究所:全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学(更新情報)2020 年疫学週第 1 週~第 53 週
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5)厚生労働省:「予防接種法第 5 条第 1 項の規定による予防接種の実施について」の一部改正について
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6)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の 5 類感染症移行後の対応について
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年5月10日更新)