2023年08月25日

22023年 第33週
(令和5年8月14日~令和5年8月20日)

【今週の注目疾患】
■劇症型溶血性レンサ球菌感染症
 2023年第31週から第33週にかけて、県内医療機関から劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome: STSS)の届出が4例あり、2023年の累計は24例となった。
本年の同疾患の累積届出数は2014年以降の同時期(第33週時点)と比べて、最も多くなっている。
届出のあった24例のうち、性別は男性16例(67%)、女性8例(33%)で男性が多かった。
年代別では70代が7例(29%)、50代・60代がそれぞれ4例ずつ(17%)、40代・80代・90代がそれぞれ3例ずつ(13%)と60代以上の高齢者が全体の7割以上を占めており、30代以下の症例の報告はなかった。
推定された感染原因・感染経路のうち、最も多く記載があったのは創傷感染で13例(54%)だった。
届出時点における死亡の報告は24例中6例(死亡割合:25%)であり、性別では男性が5例、女性が1例で、年齢中央値は51.5歳(範囲42歳~91歳)だった。

 血清群別ではG群が10例(42%)で最も多く、次いでA群が6例(25%)、B群が5例(21%)、C群が2例(8%)、記載なしが1例(4%)と続いた。
直近5週間(2023年29週~33週)では、届出例の5例中3例(60%)がA群であり、A群が多くみられた。
 2014年から2023年第33週までに県内医療機関から届出のあった劇症型溶血性レンサ球菌感染症合計247例のうち、血清群別では、A群が94例(38%)で最も多く、次いでG群が90例(36%)、B群が34例(14%)、C群が8例(3%)、不明が21例(9%)となっている。
近年、全体のうちG群の占める割合が上昇しており、A群が占める割合は2015年以降減少傾向にあるが、昨年(2022年)に比較すると今年は割合が増加している。

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症はβ溶血を示すレンサ球菌を原因とし、突発的に発症して急激に進行する敗血症性ショック病態である1)。
化膿性疾患をおこす主要な溶血性レンサ球菌感染症の原因菌には、A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes :GAS)、B群レンサ球菌(S.agalactiae :GBS)とC、G群レンサ球菌(S. dysgalactiae subsp. equisimilis : SDSE)などが含まれる2)。
初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、 発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い1)。
その致命率は30%以上に及ぶとされる。
 主な原因菌であるA群溶血性レンサ球菌は、小児の上気道炎や化膿性皮膚感染症などの起炎菌として知られており、日常よくみられる症状として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂窩織炎、猩紅熱があるが、稀に菌血症の合併を伴いうる様々な侵襲性感染症(肺炎、髄膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、皮膚軟部組織感染症、壊死性筋膜炎)を引き起こすことがある。
 昨年12月に欧州の複数国から10歳未満の小児における猩紅熱と侵襲性A群溶血性レンサ球菌感染症の症例数の増加が報告され、その増加の背景として、新型コロナウイルス感染症の対策緩和後の人との接触機会の増加や侵襲性A群溶血性レンサ球菌感染症の発生リスクを高める可能性のある呼吸器ウイルスの同時流行による共感染の発生が示唆されていた3)。
 本県において、2020年の春以降、大幅に減少していた小児科定点把握疾患のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者報告数は2023年に増加傾向を示しており、また、その他インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の患者も多数報告されていることから、今後の劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発生動向には引き続き注意が必要である。

■参考・引用
1)国立感染症研究所:劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
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2)国立感染症研究所:溶血性レンサ球菌感染症 2006年4月~2011年
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3)厚生労働省検疫所(FORTH):複数国における猩紅熱と侵襲性A群溶血性レンサ球菌感染
症の増加(WHOのDisease Outbreak Newsの邦文訳)
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【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
 2023年第33週の県全体の定点当たり報告数は、前週の17.25人*から増加し、22.38人であった。
地域別では特に長生(42.14)、市原(31.82)、君津(31.69)保健所管内で患者報告数が多かった。
*前週報告時点では17.63人

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年8月23日更新)