2023年06月23日

2023年 第24週
(令和5年6月12日~令和5年6月18日)

【今週の注目疾患】
■ヘルパンギーナ・手足口病
 2023 年第 24 週に県内の小児科定点医療機関から報告されたヘルパンギーナの定点当たり報告数は、8 週連続で増加して 5.67(人)となった。
発生報告が多かった地域は、習志野 21.5(人)、船橋市 9.2(人)、千葉市 6.7(人)保健所管内であった。
本年は例年より定点当たり報告数が増加する時期が早く、また、定点当たり報告数が高く推移している。

 また、2023 年第 24 週に県内の小児科定点医療機関から報告された手足口病の定点当たり報告数は、5 週連続で増加して 1.13(人)となった。
発生報告が多かった地域は、野田 4.3(人)、松戸 2.4(人)、習志野 1.6(人)保健所管内であった。
第 24 週時点では過去 5 年間で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以前の 2019 年に次いで 2 番目に高い定点当たり報告数となっている。

 ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性ウイルス性咽頭炎である。
乳幼児を中心に夏季に流行し、いわゆる夏風邪の代表的疾患の 1 つである。
エンテロウイルス(コクサッキーウイルス A 群 2,3,4,5,6,10、コクサッキーウイルス B 群、エコーウイルスなど)が原因ウイルスとなる 1)。
 ヘルパンギーナの臨床症状は、2~4 日の潜伏期を経て、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現し、咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内に直径 1~2mm、場合により大きいものでは 5mm ほどの紅暈に囲まれた小水疱が出現する。
やがて小水疱は破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴う。
発熱については 2~4 日間程度で解熱し、それに遅れて粘膜疹も消失する。
基本的に予後は良好であるが、無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあり、発熱以外に頭痛や嘔吐等の症状や、心不全徴候の出現に注意が必要である 1)。

 手足口病は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症である。
エンテロウイルス(コクサッキーウイルス A 群 6,16、エンテロウイルス 71 など)が原因ウイルスとなる 2)。
 手足口病の臨床症状は、3~5 日の潜伏期を経て、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に 2~3mm の水疱性発疹が出現する。
時に肘、膝、臀部などに出現することもある。
口腔粘膜では小潰瘍を形成することもある。
発熱は約 3 分の 1 にみられるが軽度であり、38℃以下のことがほとんどである。
通常は 3~7 日の経過で消退し、水疱が痂疲を形成することはない。
基本的に予後良好であるが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀ではあるが急性脳炎を生ずることもある 2)。

 エンテロウイルスの宿主は人だけであり、感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染である。
急性期に最もウイルスが排泄され感染力が強いが、回復後にも 2~4 週間にわたり便からウイルスが検出されることがある。
ワクチンはなく、予防には接触予防策、飛沫予防策が重要である。
手洗いの励行は重要で、特に排便後・排泄物の処理後の流水と石けんによる手洗いを徹底する 1)2)。

■引用・参考
1)国立感染症研究所:ヘルパンギーナとは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:手足口病とは
>>詳細はこちら

■レジオネラ症
 2023 年第 24 週に県内医療機関から 5 例のレジオネラ症が報告され、本年の累計報告数は 35例となった。
35 例のうち、病型別では肺炎型が 33 例(94%)、ポンティアック熱型が 2 例(6%)であった。
性別では男性が 27 例(77%)、女性が 8 例(23%)と男性が約 8 割であった。
年代別では、60 代が 10 例(29%)と最も多く、次いで 80 代が 8 例(23%)、70 代が 6 例(17%)であり、60 歳以上が約 8 割(27 例)を占めた。
レジオネラ症は 1 年を通して発生がみられるが、夏から秋にかけて届出が多くなる傾向があり、引き続き発生動向を注視していく必要がある。

 レジオネラ症は、レジオネラ属菌による細菌感染症であり、主な病型として重症の肺炎を引き起こすレジオネラ肺炎と、一過性で自然に改善するポンティアック熱がある。
レジオネラ属菌は、土壌や水環境に広く存在する菌である。
感染経路としては、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水等の水景施設、空調設備の冷却塔、気泡発生入浴設備、加湿器等)や循環水を利用した風呂を感染源とするエアロゾル感染、温泉浴槽内や河川で溺れた際に汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染、汚染された土壌の粉塵を吸い込んだことによる塵埃感染などがある 1)2)。
 対策としては、超音波振動などの加湿器を使用する時には、毎日水を入れ替えて容器を洗浄することが重要である。
追い炊き機能付きの風呂や 24 時間風呂などの循環式浴槽を備え付けている場合には、浴槽内に汚れやぬめり(バイオフィルム)が生じないよう定期的に清掃を行うなど、取扱説明書に従って維持管理をする 2)。
エアロゾルが発生する高圧洗浄作業や、粉塵が発生する作業、腐葉土を取り扱う園芸作業をする場合には防塵マスクを着用して感染を予防する 1)。

■引用・参考
1)国立感染症研究所:レジオネラ症とは
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:レジオネラ症
>>詳細はこちら

【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
2023 年第 24 週の県全体の定点当たり報告数は、前週の 6.49 人*から増加し 7.57 人であった。
県内 16 保健所中 11 保健所管内で前週より定点当たり報告数が増加した。
*前週報告時点では 6.46 人

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年6月21日更新)