2023年04月21日
2023年 第15週
(令和5年4月10日~令和5年4月16日)
【今週の注目疾患】
■侵襲性肺炎球菌感染症
2023 年第 15 週に県内医療機関から侵襲性肺炎球菌感染症(Invasive pneumococcaldisease, IPD)の届出が 1 例あり、2023 年の累計は 18 例となった。
18 例のうち、性別では、男性が 12 例(67%)、女性が 6 例(33%)であった。
年代別では、65 歳以上が 12 例(67%)と大部分を占め、次いで 5-64 歳が 5 例(28%)、0-4 歳が 1 例(6%)であった。
ワクチン接種歴については、0-4 歳の 1 例について沈降 13 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の計 4回の接種歴があり、また、65 歳以上の 1 例について 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の接種歴があったほか、5-64 歳の 1 例について 4 回のワクチン接種歴(ワクチンの種類は不明)があった。
その他は接種歴不明が 10例(56%)、接種歴なしが5例(28%)であった。
2013 年から 2023 年第 15 週までに県内医療機関から IPD の届出が 1,008 例あった。
2018年の年間累計報告数 165 例をピークにその後は減少傾向が続いており、特に新型コロナウイルス感染症の流行が始まった 2020 年以降は 2019 年の年間累計報告数の半数以下となっている。
年代別では、65 歳以上が 568 例(56%)で半数以上を占めていた。
肺炎は、2020 年及び 2021 年の本邦における死亡原因の第 5 位である 1)。
また、日常的に生じる成人の肺炎のうち、1/4 から 1/3 は肺炎球菌が原因と考えられている 2)。
肺炎球菌は、乳幼児の鼻咽頭において高頻度に検出され、小児や成人に中耳炎、副鼻腔炎や菌血症を伴わない肺炎などの非侵襲性感染症を引き起こす。
肺炎球菌性肺炎は、社会福祉施設等の集団生活の場における肺炎の集団感染や、他の呼吸器感染症(例えばインフルエンザ)に続発する肺炎としてもしばしば認められ、注意が必要である。
また、肺炎球菌は、ときに髄膜炎や菌血症を伴う肺炎などの IPD を引き起こす 3)。
感染経路は主に飛沫感染である。
人と人との距離の確保、マスクの着用、手洗いなどの手指衛生が感染対策となる。
その他の IPD 発症予防として、肺炎球菌ワクチン接種が行われている。
5 歳未満の小児の肺炎球菌ワクチンとしては、2013 年 4 月から沈降 7 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が定期接種対象ワクチンとなり、2013 年 11 月には沈降 13 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)に置き換わった 4)。
一方、成人の肺炎球菌ワクチンとしては、高齢者を対象として 2014 年 10 月から 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)が定期接種対象ワクチンとなった 5)。
定期接種の対象者は、①65 歳の方、及び、②60 歳から 65 歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方である。
なお、今年度までは経過措置として、年度内(2023年 4 月 1 日から 2024 年 3 月 31 日まで)に 65 歳、70 歳、75歳、80 歳、85 歳、90 歳、95 歳及び100 歳となる方も定期接種の対象となっている。
定期接種の対象の方はこの機会での接種をご検討いただきたい。
ただし、過去に PPSV23 の接種を受けたことがある方は対象外であるためご留意いただきたい。
■参考
1)厚生労働省:令和 3 年(2021)人口動態統計(確定数)の概況
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2)厚生労働省:高齢者を対象にした肺炎球菌ワクチンの定期接種を実施しています
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3)厚生労働省:13 侵襲性肺炎球菌感染症
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4)国立感染症研究所:IASR Vol.44 2023 年 1 月号
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5)厚生労働省:肺炎球菌感染症(高齢者)
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年4月19日更新)